ゲルとゾルの間で

試験が終わったのでゲルインクボールペン特集です。


 

ゲルインクボールペンとは

水性ボールペンの良さと油性ボールペンの良さを併せ持ったボールペンで、1980年台後半に開発されました。
水性ボールペンは非常に書き味が滑らかで、かすれるといったことがない反面、液体なので管理が難しく、使い切りタイプがほとんどです。
油性ボールペンは替芯(リフィル)と本体を分離して使えますしインクの残量を見たりも出来ますが、かすれやすいという問題がありました。
そこで、リフィル内にインクをゲル(流動性のない固体のようなコロイド)の形で保存し、それに筆圧をかけることでゾル(流動性のあるコロイド)状にしてペン先からインクを出す、という構造にすることで両方のいいとこ取りをしたのです。
詳しい原理は全然知らないので誰か理系の人教えてください。
 
開発から30年足らずで油性ほどに成熟していないゲルインクは製品ごとの差が激しく、適切なものを選ぶことのメリットが油性よりも大きいと感じた(つまり地雷を踏む危険性が大きい)ので書きます。
 

インクの種類

インクの性質の分類として顔料と染料の違いがあります。
顔料は粒子が大きく、インクが乾くことで紙面の上にそのまま乗って定着します
染料は粒子が小さく、そのまま紙に染み込みます。
一般的には染料の方が色彩豊かで濃い色を出せ、顔料は耐水性に優れるとされていますが技術が進歩したのか、今現在顔料と染料でそこまでの差はないです。
実用上は修正テープの上から書いて色が変わらないのが顔料、薄くなるのが染料と覚えておけばいいんじゃないでしょうか。いや覚える必要ありませんけど。
 

キャップ式とノック式

キャップをパチッと外して書くのがキャップ式、カチッと頭を押して書くのがノック式。
一般的には乾燥対策をしなければならないノック式の方が書き味としては劣ると言われています。
 

ペン先の太さ

ゲルインクボールペンは出てくるインクが液状なので、同じペン先の太さでも筆跡は油性ボールペンより太くなります。太さとしては
油性0.5=ゲル0.25<低粘度油性0.5=ゲル0.3<ゲル0.4=油性0.7<低粘度油性0.7<ゲル0.5=油性1.0<低粘度油性1.0<ゲル0.7<ゲル1.0
みたいな感じですかね。たぶん。低粘度油性ってのはジェットストリームみたいなのをイメージしてもらえれば。
なので0.3以下:すごく細い, 0.4:ちょっと細い, 0.5:ちょっと太い, 0.7:太い, 1.0:極太みたいな認識でちょうどよいかと。
よっぽど細かい人か大雑把な人以外は0.4と0.5のどっちかを使ってれば生きていけます。
 
とりあえず今回はゲルインクボールペンの主戦場という感のある、色がある程度(6色以上?)ある単色のものに絞って書いてみます。
従来の油性ボールペンは色数が少なく、黒赤青、それに加えてせいぜい緑、ぐらいまでしか作らないメーカーがほとんどでしたが、ゲルインクでは様々な色が発売されています。
ただ、それだけに昔作られてロクに改良されてない老害みたいなのがはびこっているという問題点もあり、適切な選択が求められていると言えるでしょう。
 

製品紹介

・ハイテックC(パイロット:200円)(芯径:0.25, 0.3, 0.4, 0.5)

染料キャップ式。たぶんゲルインクボールペンで一番有名。一時期はとんでもない色数(40色ぐらい?)が出ていましたが、いろいろあって現在は20色(0.25を除く)。
しかもそのうち今後も生産されるのは10色のようです。諸行無常
ただ、現在でも単色のゲルインクボールペンを買おうとすると真っ先にこれが思い浮かぶ人は多いのかなと思います。特に0.3や0.25といった極細だと。
悪いことは言わないのでやめときましょう。インク出ません。ペン先すぐ潰れます。これの0.3を使いこなせるのは低い筆圧で流麗に書ける人だけです。(0.25は後発なのでもう少しマシですが)
0.4や0.5だと繊細なペン先問題は発生せず、発色もよいので割とオススメなのですが。
インクの量が多く、買い替えの必要があまりないのも特徴です。0.3だと使いきる前にペン先が潰れるのですが、0.5あたりだとかなり助かる。
発色の特徴としては赤だけが極端に明るく、それ以外が全体的に暗め。そのせいかオレンジは赤シートで隠すやつ(僕自身はもうこれ使わないんですけど)で微妙に隠れないんで(気にしない人には気にならないレベルではある)、そういう用途にはアプリコットオレンジかピンクを使いましょう。
結論:0.25と0.3は地雷、0.4と0.5は濃い色が好きならかなり良い
オススメの色:黒、青、チェリーピンク、アプリコットオレンジ、ピンク
 

・ボールサイン(サクラクレパス:80円)(芯径:0.6)

顔料キャップ式。ゲルインクボールペンとして最初に世に出たのがこのボールサインです。ペン先が太い割にインクの出がめちゃくちゃいいというわけではなく、しかも薄いです。
様々な製品が開発され上を通り過ぎていった現在にこれを買う理由は思いつかないのですが……とりあえず販売は継続されています。
あえて買うならオレンジでしょうか。よく出ますし色合いもいいです。10年前なら赤シート用途には一番だったのですが(他に色合いが良いものが極細のものしかなく、ノートに使うと細すぎて目立たなかったため)今では他にも色々ありますからね。
結論:買う理由なし
オススメの色:オレンジ
 

・ジュース(パイロット:100円)(芯径:0.38, 0.5, 0.7, 1.0)

顔料ノック式。これまで染料でやっていたパイロットが顔料インクで作った割と新しめの製品。
これ持ってないので正直あまり知らないのですが。
試筆時にインクがあまり出なかったのでなんとなく見送ってそれっきりです。
ただ、色数の多さとその幅広さ(ダークレッドとかコーヒーブラウンとか濃い系統の色も多い)は素晴らしいですね。
結論:判定保留
 

サラサクリップ(ゼブラ:100円)(芯径:0.3, 0.4, 0.5, 0.7, 1.0)

顔料ノック式。これも有名ですかね。発売して10年以上経過してますし、前身のサラサから数えるともう15年位になるんでしょうか。
僕のバイト先で支給されてるのがこれの0.5だったりします。
全体的に水っぽいのが特徴で、僕はこの水っぽさが苦手なのですがけっこう人気みたいですね。
とりあえず黒と赤は完成度が高く、どの太さでも高品質です。他の色もまあ無難にまとめてるな、という印象。黄色やグレーなんかは実用的かつ他社にない色で好きです。
ただ、青系統にはかなりの問題があります。リフィルの中で濃淡が分離してある時はやたら濃い、ある時はやたら薄いという事態が多発するのです。僕だけかも。
あと0.3は書いてる途中で針がペン先から出てきて書けなくなる、ということがあるので使い切れるかは運次第だとか。
結論:0.3は不安、0.3以外は水っぽいインクが好きならオススメ。ただし青系統は微妙。
オススメの色:黄、グレー
 
 

・ジーノック(パイロット:100円)(芯径:0.38, 0.5, 0.7, 1.0)

染料ノック式。色数は他よりは少なく、黒赤青緑橙桃水の7色。(0.38は黒赤青緑、1.0は黒赤青だけ)
染料らしい濃い色のインクがドバドバ出ます。薄い紙だと裏写りするぐらい。書くだけなら一番ストレスなくいけるんじゃないかなと思います。
濃い緑色というのが少ないため愛用してたのですが在庫限りで生産中止らしいです。悲しい。
※どうでもいいんですけどパイロットが他にもいろいろ生産中止にしすぎてて愕然としました。ベガとかオプトの初期からある一部色とか。
結論:無くなる前に確保すべき。
オススメの色:緑
 

・シグノ スタンダード(三菱鉛筆:100円)(芯径:0.5, 0.7)

顔料キャップ式。黒赤青は0,5のみ、それ以外は0.7のみです。
割と古い製品のはずなのですがインクの性能が非常に良く未だ第一線で活躍できます。(自分で書いといてアレなんですがボールペンの第一線って何なんですかね)
強い筆圧にも耐えますし、インクの出も発色も悪くありません。耐水性も素晴らしいです。
色合いとしては黒と赤が極端に濃いのが特徴。他は普通です。
個人的には黄色が好き。サラサクリップのそれとは異なり明るい色なので字を書くのには使えませんが、その分マーカー代わりに使えます。
結論:非常に良い
オススメの色:黒、赤、黄
 

・シグノ 極細シリーズ(三菱鉛筆:150円)(芯径:0.28, 0.38, 0.5)

顔料キャップ式。基本的には上のものと似た傾向のあるインクですが細いペン先があり色数も多いです。
こちらも非常に質が高く、まあどれを選んでも問題はないかな、という印象です。
0.28だけは多少ガリガリすることもありますがまあハイテックより数段マシです。
ただしピンク系の色だけはどうも出も悪いし水っぽい。他社製品でも顔料だとそう感じることがあるので、ピンクは顔料インクの鬼門なのかもしれません。
結論:非常に良い
オススメの色:ピンク系以外だいたい
 

・シグノRT1(三菱鉛筆:150円)(芯径:0.28, 0.38, 0.5)

顔料ノック式。上のもののノック式版です。色数が若干少ないです。ノック式ですが品質が劣るという感じはなく(多少乾きが遅いぐらいでしょうか)非常に高品質です。
割と新しい製品で、改良がなされたのかピンクは逆にキャップ式よりも良く感じます。
べた褒めですが本当に叩くところが少ないんですよ。あえて言うなら0.5だとインクがよく出るので乾く前に擦れることがある、ぐらいですか。
結論:非常に良い
オススメの色:全部
 

・スリッチ(ぺんてる:200円)(芯径:0.25, 0.3, 0.4, 0.5)

染料キャップ式。実のところこれを周知したくてこの記事書いてるところがあります。
非常に品質がいいのですが今ひとつ知名度が低い。
ハイテックCの上位互換のような存在と考えてもらっていいんじゃないかなと思います。
0.25や0.3でもかすれたりペン先がダメになったりしませんし、染料なので発色も良いです。
色の濃さはハイテックCに負けますがそこは好みの問題でしょう。
現在は15色ですが、昔ちょっとの間だけもう6色ぐらい出ていたことがあり、そこにあったローズピンクやロイヤルブルーが好きだったのですがなくなってしまい残念。
結論:一押し
オススメの色:特になし
 
 
たぶん現在出てるので条件を満たすのはこのぐらいなのでここで終わり。
今後もう集めた情報と現物を使う機会がそんなになさそうなのが割と悲しい。
あとかけた金額とか考えるとちょっと我に返るから考えないようにしてる。
アフリカの子どもたちに送ったら学校5つ分×1年ぐらいはもつんじゃないかという量が貯めこまれているのは内緒。